旅行中に列車が遅れて、目的地への到着が大幅に遅れた──そんな時、SNCF(フランス国鉄)には「遅延補償制度(G30保証)」があり、一定の条件を満たせば返金やバウチャーを受け取ることができます。
遅延補償のルール・返金率・申請方法、そしてEUが定める「列車乗客の権利」についてもわかりやすく解説します。

列車が遅延したときの基本ルール
SNCFの遅延補償は、フランス国内外を運行する主要列車が対象です。
まず、遅延補償の対象となるかどうかを確認しましょう。
補償の対象となる列車
補償の対象・対象外の列車を一覧にしました。
補償の対象 | ※それぞれ独自ルールを適用 | 補償の対象外
TGV INOUI(国内・国際) INTERCITÉS TGV Lyria(スイス方面) TGV France-Italie TGV France-Luxembourg TGV France-Allemagne(DB協力便) | OUIGO TER |
補償の条件
補償対象となるのは、目的地への到着時刻の遅れです。
天候や設備トラブルなど、理由に関わらず30分以上の遅延があれば対象となります。
SNCFでは、欧州共通ルールよりも広い基準で補償を提供しており、旅行者にとっては比較的手厚い制度といえます。
- 遅延の原因を問わず(天候・故障・運行混乱など)対象
- 出発後、目的地への到着時刻の遅れが基準
- 30分以上の遅れで補償対象(SNCF独自ルール)
遅延時間ごとの補償額(G30保証)
SNCFの「G30保証」は、遅延時間に応じて返金率が決まります。
最終目的地への到着時刻を基準に、以下の割合で補償されます。
遅延時間 | 補償割合 | 補償方法 |
30分〜2時間未満 | 25% | バウチャー or 銀行振込 30〜60分の遅れ:基本的に、バウチャー 1時間を超える遅れ:バウチャーまたは銀行振込を選択可能 |
2時間〜3時間未満 | 50% | バウチャー or 銀行振込 |
3時間以上 | 75% | バウチャー or 銀行振込 |
補償方法の「バウチャー」と「銀行振込」について、もう少し詳しく紹介します。
バウチャーとは、SNCFが発行する電子クーポン(Bon d’achat numérique)です。
名称 | Bon d’achat numérique(電子クーポン) |
---|---|
受取方法 | メール受信(PDFまたはコード形式) |
有効期限 | 通常1年間 |
使用可能範囲 | SNCF Connect でのチケット購入時 |
利用制限 | 本人限定・他社利用不可 |
メリット | 即日発行、使いやすい、少額でも便利 |
デメリット | 現金化不可、有効期限切れに注意 |
銀行振込(仏:Virement bancaire、英:)と表記されていますが、遅延補償請求手続きの際に銀行の口座情報を伝えて、振り込まれるわけではありません。
- クレジットカードで支払った場合:カード経由で自動的に返金
- デビットカード扱いで支払った場合:銀行残高に自動的に返金

日本からの旅行者の方で、1年以内にフランスを再訪して鉄道に乗る予定がある場合、返金方法を「バウチャー」にしても良いかもしれません。1年以内にフランス再訪予定がない場合は、「銀行振込」を選びましょう。
遅延補償(G30)の申請方法
遅延が発生した場合は、自分でSNCF公式サイトから補償申請を行います。
操作は簡単で、数分あれば完了します。
申請期限と対象
- 遅延発生日から 24時間〜60日以内 に申請可能
- 紙チケット・Eチケットいずれも対象
申請の手順
- SNCF Voyageurs「Request and claim」ページを開く
- 次の順にクリックする:Delayed Train>Making a delay claim>Regional & mainline trains>
- SNCF Connect のログイン情報がある場合:Loginをクリック後、ログイン情報を入力する
- ログイン情報がない場合:Continue without consumer accountをクリックする
- 必要情報を入力する
- File reference(チケット番号。注文メールに記載あり)
- Last name used when ordering(注文時の姓)
- 請求請求の手続きを行う旅行を選択する

ここで「返金方法の選択(バウチャーまたは銀行振込)」を問われる項目があるかもしれません。実際に補償請求の手続きを行ったことがないので、はっきりとお伝えすることができず申し訳ないです。
- 画面の指示に沿って、請求手続きを完了する
- 遅延補償請求の手続きを受けたことを伝える確認メールが届く。
24〜48時間以内に補償額を通知するメールが届く。
返金までの日数
補償額を知らせるメールを受け取った後、払い戻しにかかる日数の目安は次のとおりです。
バウチャー(メールで届く) | 即日〜数日 |
銀行振込 | 3〜5営業日 |
乗換がある場合の取り扱い
フランス国内外では、複数列車を乗り継ぐ旅も少なくありません。
「Billet Direct(ビレ・ディレクト)」かどうかで扱いが変わります。
Billet Direct(1枚のチケット)の場合
複数区間を1回の決済で購入した場合、すべての区間が1契約として扱われます。
この場合は、最終目的地の遅延を基準に補償を受けられます。
SNCFは代替列車の手配や払い戻しなど、最終目的地までのサポートを行います。
複数チケットを個別購入した場合
一方で、区間ごとに別購入した場合は、遅延が発生した区間のみが補償対象です。
乗り継ぎ便の遅延・欠便により次の列車に乗れなくなっても、その分は対象外になります。
G30の対象外となるケース
SNCFすべての列車がG30保証の対象ではありません。
次の列車や状況では、異なるルールが適用されます。
OUIGO | 専用の変更ルールあり |
TER(在来線) | 遅延補償制度なし |
ストライキ・運休 | 特別措置による変更・返金対応 |
(Eurostar、Renfe、CFFなど) | SNCF以外の国際鉄道各社の規約に基づく |
欧州共通の「鉄道旅客の権利」について
SNCFの補償制度は、EUが定めた「鉄道旅客の権利」に基づいています。
これは航空機のEU規則261/2004に相当するもので、欧州全域で共通に適用されています。
EU規則 2021/782とは
2023年6月7日から施行された「鉄道旅客の権利および義務に関する規則(EU2021/782)」で、すべてのEU加盟国・国際列車に適用されます。
この規則により、遅延・キャンセル時の補償や再ルーティング(振替)が義務化されました。
乗客が持つ主な権利
鉄道旅客が持つ主な権利は次のとおりです。
- 60分以上の遅延:返金または再ルーティング(別列車・別日)を要求できる
- 同一予約で乗り継ぎを逃した場合:最終目的地まで無料で再手配してもらう権利
- 旅行を取りやめる場合:全額払い戻し請求が可能
- 障害・移動制限のある乗客への補助義務
- 荷物・自転車の取り扱い責任
SNCFでの適用
SNCFでは、このEU基準よりさらに手厚く、「30分以上の遅延」でも補償対象としています。
つまり、SNCFのG30保証はEU法の上位互換といえます。

ちなみに、飛行機にも同じように「航空旅客の権利(EU261/2004)」があり、遅延・欠航時には航空会社や補償代行サービスを通じて返金請求が可能です。
よくある質問(FAQ)
- 遅延証明書はどこで入手できますか?
-
SNCF Connectの予約詳細ページからPDF形式でダウンロード可能です。
- 返金のバウチャーはいつまで使えますか?
-
通常1年間有効。次回のSNCFチケット購入時に利用可能。
まとめ|SNCF遅延時は「G30補償」を申請しよう
- SNCFでは30分以上の遅延で補償対象(G30保証)
- EU法「鉄道旅客の権利」に基づく安心の制度
- 申請はSNCF公式サイトから、遅延後60日以内に行う
- バウチャーまたは銀行振込で補償を受け取れる
SNCFの使い方ガイド(関連記事)
SNCF公式サイト・アプリでの予約手順を図解
Carte Avantageなどの買い方・更新方法
予約変更の無料期間と手数料、手順を解説
キャンセルの無料期間、手順、返金までの日数
ストライキ・運休時の特別対応と申請手順
遅延補償の申請方法
忘れ物の届け出から受け取りまでを紹介
Ouigoの基本ルール
在来線Ouigoの乗り方と注意点
コメント