フランス・シャンパーニュ地方の南部の中心都市「トロワ」は、中世の面影を残す木骨組みの建物が並ぶかわいらしい街。
トロワはパリから電車で1時間30分で来られるので、日帰り旅にもおすすめです。
シャンパーニュ地方の観光といえばランスやエペルネが有名で、だいぶ地味な印象のトロワですが、だからこそ「穴場」。
街も人も観光化され過ぎていないところが魅力ともいえます。
建築、ショッピング、美術館・博物館、そして地元シャンパーニュ&グルメも楽しめるトロワ観光のポイントを紹介します。

トロワの基本情報
トロワはどこにある?
トロワ(Troyes)は、フランス北東部・グラン・テスト地域圏のオーブ県(Aube)にある街。
パリを流れる有名なセーヌ川(La Seine)上流、シャンパーニュ地方南部に位置します。
パリ中心部から車で約165km、ランスから130km、エペルネから100km離れています。
トロワの基本情報
トロワ(Troyes)は、オーブ県(L’Aube)の県庁所在地です。
面積 | オーブ県 :6004㎢ トロワ市: 13㎢ |
人口 | オーブ県 :31万人 トロワ市: 6万人 |
トロワ市民 | 男性:Troyen(トロワイアン) 女性:Troyenne(トロワイエンヌ) |

人口だけで比べると、トロワはランスの3分の1、エペルネの2倍程度の規模です。
トロワの天気
トロワの気温は、パリとほぼ同じです。
旅行の準備をする際は「パリの天気」をチェックしておけば、大きく外れないでしょう。
平 均 気 温 (°C) | 平 均 最 低 気 温 (°C) | 最 高 気 温 (°C) | 降 水 量 (mm) | 湿 度 (%) | 雨 の 日 数 | 日 照 時 間 | |
1月 | 3.6 | 1.2 | 6.2 | 71 | 84% | 10 | 3.1 |
2月 | 4.0 | 0.8 | 7.5 | 62 | 80% | 9 | 4.1 |
3月 | 7.0 | 2.8 | 11.3 | 70 | 76% | 9 | 6.1 |
4月 | 10.5 | 5.7 | 15.0 | 67 | 71% | 9 | 8.4 |
5月 | 14.3 | 9.6 | 18.5 | 75 | 73% | 9 | 9.0 |
6月 | 17.9 | 13.1 | 22.3 | 63 | 68% | 8 | 10.0 |
7月 | 20.0 | 15.3 | 24.4 | 65 | 65% | 8 | 10.4 |
8月 | 19.6 | 14.9 | 24.1 | 64 | 66% | 7 | 9.3 |
9月 | 16.2 | 11.9 | 20.7 | 54 | 71% | 7 | 7.3 |
10月 | 12.5 | 9.0 | 16.2 | 76 | 79% | 9 | 5.4 |
11月 | 7.5 | 4.8 | 10.4 | 76 | 85% | 10 | 3.6 |
12月 | 4.4 | 1.9 | 6.9 | 84 | 85% | 10 | 3.0 |
(引用:TABLEAU CLIMATIQUE TROYES, Climate Deta
※1991-2021年のデータに基づく。日照時間のみ1999-2019年のデータ)
日本の気温との比較や、服装のアドバイスは別記事で詳しく説明しているので、参考にしてください。
トロワ市街の地図
地図引用:トロワ・シャンパーニュ観光局
トロワ市街は別名「シャンパーニュのコルク(Bouchon du Champagne)」と呼ばれています。
上空から見ると、シャンパーニュのコルクの形をしているからです。

地図を見ても、コルクの形がわかります。

トロワ市街の路面には、テンプル騎士団が刻まれた三角形の印が埋められています。
このマークに沿って歩くと、トロワ旧市街の観光コースを一周できます。
トロワの歴史
トロワの歴史を年表形式で簡単に紹介します。

街について知らなくても、世界史を勉強したことがある人なら「シャンパーニュ大市」「トロワ条約」でトロワの名前を知っている人は多いかもしれません。
紀元前6世紀頃 | ガリアのトリカッセ族が定住。のちにローマ都市「Augustobona」で発展。 |
5世紀頃 | トロワ司教座が設置され、宗教都市としての地位を築き始める。 |
9世紀 | ノルマン人の侵入による被害を受けるが再建。中世都市として発展の基礎を固める。 |
12~13世紀(中世最盛期) | トロワを含むシャンパーニュ地方で「シャンパーニュ大市(Foires de Champagne)」が隆盛。ヨーロッパ随一の国際商業都市となる。 |
1129年 | トロワ公会議(Concile de Troyes)にて、テンプル騎士団が教会に正式に承認される。 |
1198〜1200年 | 現在のサン・ピエール・サン・ポール大聖堂の建設が始まる。 |
1260年 | トロワ出身のジャック・パンタレオンが教皇ウルバン4世として即位する。 |
1284年 | シャンパーニュ伯家最後の相続人でありナバラ王家のジャンヌが、後のフランス王フィリップ4世(フィリップ・ル・ベル)と結婚。 |
1304年 | シャンパーニュ地方がフランス王家に完全統合される。 |
1420年5月21日 | 百年戦争中に「トロワ条約」締結。イングランド王にフランス王位継承を認める内容で歴史的転換点に。 |
1420年6月2日 | フランス王女カトリーヌとイングランド王ヘンリー5世が、サン=ジャン教会で結婚。 |
1429年7月10日 | ジャンヌ・ダルクとシャルル7世がトロワに入城。 |
1524年5月24日 | 大火災により街の3分の2が焼失。現在見られる木骨組みの建物群(maison à colombages)はこの後に再建された。 |
1640年 | サン・ピエール・サン・ポール大聖堂が完成。 |
1700年 | サン・ピエール・サン・ポール大聖堂で火災。建物に大きな被害を受ける。 |
1710年 | 中世から繁栄していたシャンパーニュの大市が廃止され、開催地がランスとリヨンに移される。 |
1805年 | ナポレオン・ボナパルトがトロワに数日滞在し、将来的な運河のルートを定める。 |
1814年 | フランス戦役中、ナポレオンがトロワを軍事作戦の要所に設定。 同年、メリヤス産業(bonneterie)では約12,000人の労働者が従事。 |
19~20世紀 | 繊維・靴下産業が発展し、「フランスの靴下の首都」として名を馳せる。 |
1940年 | ドイツ軍がトロワを占領(第二次世界大戦)。 |
1944年 | パットン将軍率いるアメリカ軍がトロワを解放。 |
1964年 | サン・テュルバン教会が「バジリカ(大聖堂)」に昇格。 |
2000年代以降 | トロワ旧市街の保存と文化施設の整備が進み、観光都市として再評価される。2022年にはステンドグラス博物館(Cité du Vitrail)がリニューアルオープン。 |
トロワへの行き方
パリから

パリからトロワへのアクセスは良好で、電車がおすすめ。
パリ東駅からトロワ駅までTER(在来線)で1時間30分で来ることができます。
パリからトロワまでの交通手段別の所要時間は下表のとおりです。
交通手段 | |
経路:Gare de l’Est (パリ東駅)→ Gare de Troyes(トロワ駅) 時間:1時間30分 SNCFで予約する Omioで予約する | |
車 | 経路:Paris → Troyes 時間:2時間〜 GetTransfer.comで予約する |
高速バス | 経路:Paris Bercy Seine(ベルシー・セーヌ) → Gare de Troyes(トロワ駅) 時間:2時間20分〜 FlixBusで予約する |
パリからトロワまでの移動方法は、別記事で詳しく紹介しています。
シャルル・ド・ゴール空港から

電車の場合、シャルル・ド・ゴール空港第2ターミナル駅とトロワ駅をつなぐ直通電車はないので、乗継ぎが少なくとも2回(地下鉄を使うと3回)あります。
予算が許すようでしたら、車の利用をおすすめします。
交通手段 | |
経路:CDG空港 → Gare du Nord(パリ北駅) → Gare de l’Est(パリ東駅) → Troyes(トロワ駅) 時間:2時間20分〜 SNCFで予約する Omioで予約する | |
車 | 経路:Paris → Troyes 時間:2時間〜 GetTransfer.comで予約する |

大きなスーツケースがある方は、Gare du Nord(パリ北駅)と Gare de l’Est(パリ東駅)の移動(徒歩10分または地下鉄)が大変かもしれません。その点を考慮して、交通手段の選択や旅程を計画してください。
シャルル・ド・ゴール空港からトロワまでの移動方法は、別記事で詳しく紹介しています。
ランスまたはエペルネから
電車の場合、ランス・エペルネとトロワを南北につなぐ線路はないので、シャロン・アン・シャンパーニュ駅でバスに乗り換える必要があります。
車の場合、高速道路を利用すれば1時間20分ほどです。
交通手段 | |
経路: 【電車】Reims(またはEpernay) → Châlons-en-Champagne 【バス】Châlons-en-Champagne → Troyes Gare Routière 時間:ランスから1時間55分、エペルネから1時間49分 SNCFで予約する Omioで予約する | |
車 | 経路:Reims(またはEpernay) → Troyes 時間:1時間20分〜 GetTransfer.comで予約する |
ランスまたはエペルネからトロワまでの移動方法は、別記事で詳しく紹介しています。
ディジョンから
ブルゴーニュ地方の玄関口とも言えるディジョンから、トロワの街までは、電車・車とも2時間程度で移動できます。
交通手段 | |
経路:Dijon Ville(ディジョン駅) → Troyes(トロワ駅)※乗換がある場合もあり 時間:2時間20分〜 SNCFで予約する Omioで予約する | |
車 | 経路:Dijon → Troyes 時間:約2時間 GetTransfer.comで予約する |
トロワの観光スポット
旧市街と木骨組みの家

トロワの魅力が凝縮されているのが、旧市街(le Vieux Troyes)。
特に目を引くのが、カラフルな木骨組みの家(maisons à colombages)です。
15〜16世紀に建てられたもので、トロワの街を襲った1524年の大火災後、街の中心部が木材と漆喰で再建されたことにより現在の姿が生まれました。
2度の世界大戦で大きな被害を受けなかったため、中世の街並みが保存されています。

ランスやエペルネのあるマルヌ県は「石材」を使った建築が多いのですが、トロワのあるオーブ県は「木材」を多用しています。同じシャンパーニュ地方で隣り合う県ですが、建物から受ける街の印象はだいぶ違います。
シャンパーニュのコルクの形をしたトロワ市街で、「旧市街」と呼ばれるのは、サン・ピエール・サン・ポール大聖堂からサント・マドレーヌ教会周辺のエリアです。
木骨組みの家々と石畳の風景が美しく、ただ歩いているだけでも楽しめますが、旧市街で次の3つの通りが特におすすめです。
Ruelle des Chats(猫の小道)
トロワ旧市街で最も有名な路地。建物同士が支え合うように立ち並ぶ。撮影スポット。
Rue Champeaux(シャンポー通り)
美しい木骨組みの家が続く通り。テラス席を出す店が多く、コーヒーやビール、シャンパーニュを楽しむ人たちで賑わう。
Rue Emile Zola(エミール・ゾラ通り)
旧市街のショッピングストリート。観光客だけでなく、地元客も通うパン屋やワイン店が軒を連ねる。
セーヌ川と水路

トロワ市内をセーヌ川(La Seine)の上流が静かに流れています。
観光名所「クール・ド・トロワ」や「カナル沿いの遊歩道」も、セーヌ川の水系の一部。
また、中世以降に都市計画や水利・製造業のために整備された人工水路が数多く残っています。
特にトロワ旧市街は、昔の川筋や運河の名残を利用して、風情ある景観がつくられています。
「Canal du Trévois(カナル・デュ・トレヴォワ)」「Canal du Ru Cordé(カナル・デュ・リュ・コルデ)」は代表的な水路。

シャンパーニュのコルクの形でいうところの頭部の丸みに沿うように、トロワ市街をセーヌ川が流れています。水路に沿って遊歩道が整備されているので、水の流れに癒されながら散歩を楽しめるのもトロワの良いところです。
クール・ド・トロワ

トロワの人気撮影スポット「クール・ド・トロワ(Coeur de Troyes)」は、旧市街の中心を流れる運河沿いに設置された巨大なハート型オブジェ。
巨大オブジェのすぐ手前にかかる橋には、たくさんの「愛の錠前(cadenas d’amour)」がかけられており、恋人たちのスポットにもなっています。

ハートの周りには噴水があり昼は爽やかな印象ですが、夜は赤くライトアップされて別の顔を見せてくれます。

コルク栓でいうところの「頭部」と「胴体」の境目に沿うように流れる運河にあるオブジェは、まさにトロワの街の「ハート=心臓」といえそうです。
Coeur de Troyes(クール・ド・トロワ)
住所:Quai des Comtes de Champagne
サン・ピエール・サン・ポール大聖堂

コルク栓の形をした旧市街の「頭部」にある、サン・ピエール・サン・ポール大聖堂(Cathédrale Saint-Pierre Saint-Paul)。
13世紀初頭から約400年をかけて造られたゴシック建築は、全長114メートル、幅50メートル、天井下の高さ28.5メートルという規模を誇ります。
パリやランスのノートルダム大聖堂のような2つの尖塔が対象に並ぶ姿とは異なり、尖塔は1つだけしかありません。
この非対称のシルエットが、サン・ピエール・サン・ポール大聖堂の魅力。

大聖堂の内部に足を踏み入れると、ステンドグラスの光の世界が広がります。
特に有名なのは、13世紀〜16世紀のものを中心とした150枚以上のステンドグラス群です。

午前中の訪問がおすすめ。朝の光が差し込んでスタンドグラスがより一層美しく見えます。また、観光客が少ないのでじっくり見学できます。
Cathédrale Saint-Pierre Saint-Paul(サン・ピエール・サン・ポール大聖堂)
住所:Place Saint-Pierre 10 000 TROYES
サント・マドレーヌ教会
サント・マドレーヌ教会(Eglise sainte-Madeleine)は、トロワで最も古い教会。
その起源は12世紀後半まで遡り、数世紀に渡って修復・改築を重ねながら、ゴシック様式とルネサンス様式が融合した独特の美しさをたたえています。
この教会の最大の見どころは、ジュべ(jubé)と呼ばれる石で作られた繊細なレースのような彫刻が施された間仕切り壁。
これは、聖歌隊席と信徒席を区切る目的で15〜16世紀に設けられたもので、ルネサンス様式のジュベとしてはフランス国内でも最も美しいもののひとつとされています。
さらに内部には、彩り豊なステンドグラスの傑作が多数残されており、「聖マドレーヌの生涯」や「天地創造」を描いた窓は、信仰だけでなく芸術性の高さからも高い評価を受けています。
Eglise Sainte-Madeleine(サント・マドレーヌ教会)
住所:Rue de la Madeleine 10 000 TROYES
サン・テュルバン大聖堂
サン・テュルバン教会(Basiique Saint Urbain)は、トロワ出身で後にローマ教皇となったウルバン4世(本名ジャック・パンタレオン)によって、13世紀半ばに創設されました。
建設地は、彼の父親が営んでいた靴職人の店の跡地と言われています。
1964年にカトリック教会によりバジリカ(basilique)に格上げされました。
見どころは、13世紀から続く高窓いっぱいのステンドグラスと、繊細な石細工です。
Basiique Saint Urbain(サン・テュルバン大聖堂)
住所:Place Vernier 10 000 TROYES
トロワ近代美術館

トロワ近代博物館(Musée d’Art Moderne)は、マティス、ドラン、ピカソなど20世紀フランスの巨匠たちの作品を収蔵する美術館。
前出のサン・ピエール・サン・ポール大聖堂の真隣にあります。
旧司教館(16〜17世紀)を活用した落ち着いた空間で、質の高いコレクションをゆっくり鑑賞できます。
規模は小さいながらも見ごたえ十分で、美術好きには外せないスポットです。
Musée d’Art Moderne(トロワ近代美術館)
住所:14 Place Saint-Pierre 10000 TROYES
職人の道具と労働思想の館
職人の道具と労働思想の館(Maison de l’Outil et de Pensée Ouvrière)は、世界最大級の伝統工具コレクションを誇るユニークな博物館。
木工、金属加工、皮革などの職人道具が美しく展示されており、労働の歴史や哲学にも触れられます。
建物は、1556年にジャン・ド・モーロワによって建てられたルネサンス様式の邸宅で、一時的に孤児院として使われた後、1746年に世界で初めて機械式の靴下編み機が導入された歴史的な場所としても知られています。
この博物館は、1913年生まれのポール・フェレ神父の強い想いによって設立されました。
彼は、職人の仕事と思想の価値を後世に伝えるべく職人道具の保存と労働哲学の普及に尽力、その成果がこの施設に結実しています。
Maison de l’Outil et de Pensée Ouvrière(職人の道具と労働思想の館)
住所:7 rue de la Trinité 10000 TROYES
ステンドグラス博物館
2022年にリニューアルオープンしたステンドグラス博物館(Cité du Vitrail)。
トロワが誇るステンドグラス文化の魅力を、歴史から現代まで一望できる注目スポットです。
歴史ある修道院を改装した落ち着いた空間で、ステンドグラスをゆったりと鑑賞できます。
展示スペースは全体で約3,000㎡、そのうち1,000㎡以上が常設・企画展示にあてられ、12世紀から現代に至るまでの貴重なオリジナル作品を多数展示。
地元オーブ地方が誇る「ガラス芸術の遺産」に焦点を当て、特に「美しき16世紀(Beau XVIe)」と称される時代の傑作群は必見です。

ステンドグラス博物館には入場無料の「裏庭」があります。植栽やベンチもあるので、ほっと一息入れる場所としてもおすすめ。ステンドグラスの枠に花や葉を絡ませていて(フランスって、見せ方が上手)と改めて感じます。
Cité du Vitrail(ステンドグラス博物館)
住所:31 Quai des Comtes de Champagne 10000 TROYES
オテル・デュー・ル・コント薬局博物館
ステンドグラス博物館と同じ建物にあるオテル・デュー・ル・コント薬局(Apothicairerie de l’Hôtel‑Dieu‑le‑Comte)」は、18世紀の建物と薬品保管室がそのまま保存されています。
この場所は12世紀、シャンパーニュ伯アンリ1世が設立した病院「オテル・デュー・サン・テティエンヌ」に由来し、17世紀末に老朽化した建物を全面的に再建、地域の病人や捨て子、負傷兵などを受け入れてきた歴史があります。
この薬局は、1962年まで実際に調剤に使われており、1976年から一般公開されました。
2022年ステンドグラス博物館のオープンにあたり、薬局も大幅にリニューアルしました。
薬局内部は2つの部屋で構成されています。
大広間(63㎡):18世紀当時の展示方法が忠実に再現された319個の手書きの美しい木箱(薬品用)が並ぶ。これらの絵柄は1695年刊行の『薬品の一般史』に基づくとされ、フランス国内では唯一のコレクション。
ラボラトリー(59㎡):薬の調合を行っていた場所。現在は「Apothicaires en herbe(若き薬剤師たち)」という教育エリアに刷新。動植物・鉱物をテーマにした触って学べる展示や香りの体験、塗り絵、デジタルゲームが用意され、子どもから大人まで楽しめる内容。
Apothicairerie de l’Hôtel-Dieu-le-Comte(オテル・デュー・ル・コント薬局)
住所:31 quai des Comtes de Champagne 10000 Troyes(※ステンドグラス博物館と同じ建物)
街にたたずむ彫刻の数々
トロワの街を歩いていると、たくさんの「彫刻」に出会うことができます。
中世から16世紀にかけて「トロワ派」と呼ばれる彫刻文化が栄えた歴史があり、石や木の像が教会や建物を彩っていました。
19世紀以降、復興期や現代アート振興により、トロワの街のあちこちに彫刻が設置され、市民や観光客を楽しませています。
代表的なものを3つ紹介します。
水辺のベンチに座る帽子を被った女性「リリ(Lili)」。
ハンガリー出身の作家による彫刻は、パリ6区「Institut Hongrois」にもそっくりの彫像があります。

画像引用:PARIS LA DOUCE
Lili(リリ)
住所:Quai des comtes de Champagne
作者:Andras Lapis(ハンガリー)
口づけを交わす少女(La Jeune Fille au Baiser)の像は、オランダ・Middelburg市にあるSjer Jacobs氏の作品「ソフィア(Sofia)」を拡大して再現したものです。
少女像の正面に立ってキスをするように撮影をする観光客が大勢います。
La Jeune Fille au Baiser(口づけを交わす少女)
住所:rue Clemenceau と du quai Dampierre の角
作者:Sjer Jacobs(オランダ)
「フィレンツェの歌手(Le Chanteur florentin)」は、19世紀末に注目された芸術家の一人、彫刻家・画家ポール・デュボワ(Paul Dubois)の作品です。
彼のイタリア旅行後に制作されたもので、1863年のパリ・サロンで名誉賞(メダイユ・ドヌール)受賞作。

画像引用:Wikipedia “Chanteur florentin du XVe siècle“
Le Chanteur florentin(フィレンツェの歌手)
住所:Place Saint Nizier 10000 Troyes
作者:Paul Dubois(フランス・Nogent-Sur-Seine、1829-1905)
トロワの観光イベント
7月:シャンパーニュ街道祭り
シャンパーニュ街道祭り(La route du Champagne en fête)」は、シャンパーニュ地方オーブ地区のシャンパーニュ生産者がドメーヌを開放、参加者はシャンパーニュを楽しめるイベントです。
オーブ地区に点在する村々が毎年交代でホストとなり、通常一般公開されていない小規模メゾンや生産者のカーヴ(貯蔵庫)を無料または有料で見学できるまたとない機会。
参加生産者は数十軒にのぼり、各メゾンで試飲や直売、音楽イベント、屋台料理などが楽しめるにぎやかな雰囲気に包まれます。
毎年楽しみにしているリピーター参加者が多く、約半数は外国人が占めるそうです。
参加には「パスポート(Passport)」の事前予約が必要。
パスポート料金には試飲用グラス・イベント用パスポート・試飲チケットなどが含まれます。

トロワで開催されるわけではありませんが、トロワを拠点にして参加すると良いでしょう。
La route du Champagne en fête(シャンパーニュ街道祭り)
10月:ニュイ・ド・シャンパーニュ
ニュイ・ド・シャンパーニュ(Nuits de Champagne)は、フランス・シャンパーニュ地方最大級のシャンソン音楽フェスティバル。
トロワ市内12カ所の会場で、9日間にわたり開催され、合計50公演以上のコンサートが行われる本格的な音楽祭です。
フランスを代表する人気アーティストから新進気鋭の若手まで、「今のフランスの音楽シーン」を映す顔ぶれが出演。
さらに地元の学校や合唱団とのコラボレーションは、子どもから大人まで地域が一体となって作り上げる心温まるステージとして好評です。
コンサートは基本的に有料で、公式ウェブサイトなどで事前購入が可能。
イベントの詳細は、公式ページをご覧ください。
Nuits de Champagne(ニュイ・ド・シャンパーニュ)
12月:マルシェ・ド・ノエル
2005年を最後に開催が途絶えていたトロワのマルシェ・ド・ノエルが、2024年に復活しました。
トロワ市庁舎前の広場周辺に並んだシャレ(山小屋風の屋台)は25軒。
アルザス地方(ストラスブルグ、コルマール)やランスのマルシェ・ド・ノエルを知っている方にとっては、とても小さな規模ですが、クリスマスのイルミネーションに包まれる中世の街並みは一見の価値がありそうです。
2025年の開催有無はまだ発表されていません(2025年6月時点)が、2024年のマルシェ・ド・ノエルはトロワ市民に好評だったと言いますから、公式発表を待ちましょう。
トロワ名物
ここでは、2つのトロワ名物を紹介します。
アンドゥイエット
トロワの名物料理といえば、アンドゥイエット(Andouillette)。
フランスの伝統的な腸詰めソーセージの一種で、特にトロワが本場として知られています。
豚の腸や胃(トリップ)を細かく刻み、香辛料やハーブとともに腸詰めした太くて素朴なソーセージは、独特の香りと食感が特徴。
アンドゥイエットは他の地域にもありますが、アンドゥイエット愛好者協会(Association Amicale des Amateurs d’Andouillette Authentique、通称5A)によって、品質と伝統を守る製品としてトロワ産アンドゥイエットが公式に認定されてきた歴史があります。
この5A認定(「AAAAA」と表記されることもある)ラベルを持つアンドゥイエットは、プロの料理人や食通から高い信頼を得ています。

アンドゥイエットは、フランス人の間でも好みが分かれる、一種の「ホルモン料理」。その独特な香りを「臭み」として感じる人もいます。レストランでは、グリルやマスタード煮込みなど、さまざまな方法で調理されています。トロワ名物ですから、ぜひ試してみてください。
シャウルス
トロワ近郊で生産される白カビチーズ、シャウルス(Chaource)。
クリーミーでなめらかな口当たりと、ほどよい塩味、ミルクの甘みが特徴です。
地元レストランやワインバーでは、シャウルスのチーズそのものだけではなく、シャウルスを使った料理も提供されています。

シャウルスは、クセのない食べやすいチーズです。個人的に、シャンパーニュよりも、軽目の赤ワイン(ピノ・ノワールなど)と合わせる方が好きです。
トロワのレストラン&ワインバー
Aux Crieurs de Vin
ヴァン・ナチュールを揃える、オー・クリウール・ド・ヴァン(Aux Crieurs de Vin)。
ワイン好きには有名な店で、もともとはワインショップですが、ワイン・ビストロも併設しています。
むき出しのレンガ壁、ビストロ風の家具、いまどきなコンセプト。まずセラーで好きなボトルを選び、それに合わせて素材重視の小皿料理(職人仕込みのシャルキュトリー、農家の肉、ボルディエのチーズなど)を楽しめます。 ワイン愛にあふれる店主がお客ひとりひとりに話しかけます。至福のひとときを。
引用:Guide Michelin(当ブログ筆者が和訳)

ワイン愛好家が集まる有名店。残念ながら私はまだ訪問したことがありませんが、次にトロワに行く時はぜひ寄りたいと思います。
Aux Crieurs de Vin(オー・クリウール・ド・ヴァン)
住所:4, place Jean Jaurès 10000 Troyes
Chez Philippe
シェ・フィリップ(Chez Philippe)は、シャンパーニュ&ワインバー兼ショップ。
グラスで楽しめる地元オーブ産のシャンパーニュも多く、ハムやチーズのプレートのおつまみ類も提供しています。

飲んだことののない地元オーブの小規模生産者のシャンパーニュが並んでいて興味津々。私がトロワに行ったタイミングは定休日で入れなかったので、次回はぜひ行ってみたい店のひとつです。
Chez Philippe(シェ・フィリップ)
住所:11 Rue Champeaux, 10000 Troyes
Le 13
定番料理とタパスを出すワイン・ビストロ、ル・トレーズ(Le 13)。
テラスは2テーブルほどしかありませんが、店内は広い印象です。
月曜日に営業している有難い店(2025年5月時点)。

と卵ってこんなに合うんだ!」とばかりに、パンがよくすすむ1皿。


私が訪問した時(2025年5月)は、残念ながらオーブ産のシャンパーニュは取り扱っていませんでした。シャンパーニュの選択肢が少ないのが残念ですが、グラスで飲めるスティルワインの種類は多め。料理はシャウルスチーズを使った2皿を注文したので、地元の味を楽しめて大満足でした。
Le 13(ル・トレーズ)
住所:13 rue Champeaux, 10000 Troyes
Le Quai de Champagne
ル・ド・コルデの水路のほとりに佇む、19世紀のブルジョワ邸宅を現代的な感性で改装したレストラン。木々が茂る魅力的な庭園に囲まれた、大きな出窓のあるダイニングルームが2つあります。シェフのジャン=ポール・ブラガが手がけるのは、旬の食材を活かした現代的な料理。クラシックな料理(モリーユ茸入りのリ・ド・ヴォーのブレゼ、ロッシーニ風牛ヒレ肉のソテー)に加え、出身地であるポルトガルの郷土料理も提供しています。マグロとタラのカルデイラーダ(魚介の煮込み料理)などがその一例です。
引用:Guide Michelin(当ブログ筆者が和訳)

ホテルから旧市街へと向かう途中に(立派なお屋敷だなァ)と思った建物がこちらのレストランでした。コース価格も立派です。広い庭があり、ゆったりと食事を楽しめそうです。
Le Quai de Champagne(ル・ケ・ド・シャンパーニュ)
住所:1 bis quai des Comtes-de-Champagne, Troyes, 10000, France
マルシェ

レ・アール中央市場(Marché central des Halles)は、毎日営業。
市場で購入したものであれば、その場で食べられるイートインスペースも用意されています。
また週に数回、市場前の広場で屋外マルシェが開かれる日があります。
Marché central des Halles(レ・アール中央市場)
住所:Rue Claude Huez 10000 Troyes
2025年度の営業時間(屋内)
月 | 8:00〜13:00 |
火〜木 | 8:00〜13:00 15:30〜19:00 |
金・土 | 7:00〜19:00 |
日 | 9:00〜13:00 |
2025年度の営業時間(屋外・市場前広場)
水・金 | 8:00〜17:00 |
土 | 8:00〜14:00 |
トロワで買う
シャンパーニュ&ワインショップ

トロワに来たならシャンパーニュを忘れることはできません。
市街のおすすめワインショップを3軒紹介します。
Aux Crieurs de Vin, ① 4, place Jean Jaurès、② Place de l’Hôtel de ville
ビストロを兼ねた路面店と市場内店の2店舗あり。自然派のシャンパーニュ・ワインを販売。
Cellier Saint Pierre, 1 place St Pierre
サン・ピエール・サン・ポール大聖堂前。地元シャンパーニュに加え、トロワ名物「プルネル・ド・トロワ」など蒸留酒も販売。
Chez Philippe, 11 Rue Champeaux
旧市街にあるシャンパーニュバー兼ショップ。
購入するシャンパーニュを「免税」扱いにしたい方は、下の記事を参考にしてください。
チーズ専門店
チーズを探すなら、トロワ中央市場へ行きましょう。
市場内にチーズショップが数店舗あります。
Fromagerie Julien Pouillot(フロマージュリー・ジュリアン・プイヨ)
La Fromagerie des Halles(フロマージュリー・デ・アール)
Les Fromages d’Aurélie(フロマージュリー・ドーレリー)
パン屋
Boulangerie Pâtisserie Gérard, 42 Rue Emile Zola, 10000 Troyes
Tonton Farine,

両店とも未訪問ですが、評判の良い店を選びました。トロワ市街のエリアによってはパン屋さんがなかなか見つからない印象があります。良かったら参考にしてください。
トロワ土産
トロワで買いたいお土産を、シャンパーニュ以外で6つ選びました。
- シャウルス・チーズ
- メゾン・カフェのチョコレート
- アンドゥイエット
- プリュネル・ド・トロワ
- シードル
- ラ・プティット・マドレーヌの香水
トロワ近郊のアウトレット
トロワ(Troyes)は、フランス最大級のアウトレット街としても知られています。
市内と郊外には4つの大型アウトレット施設が集まり、年間を通して多くの買い物客が訪れます。
トロワは、19世紀から繊維業で栄えた街で、特に下着・ニット産業が盛んで、多くの工場が立地していました。
時代の変化とともに工場は減少しましたが、その跡地を再利用して生まれたのが現在のアウトレットモールです。
トロワ近郊のアウトレット4つ
Marques Avenue Troyes | 古い繊維工場を活用、アパレル・雑貨中心 |
McArthurGlen Troyes | フランス最大級、国際ブランド多数 |
Marques City | 若者向けカジュアル・スポーツウェア |
Village de Marques | 小規模・モダンな雰囲気 |

わたしは、上記 4つのアウトレットの中で一番店舗数が多いMcArthurGlen Troyesを利用します。人気ブランドも多く出店しており、アウトレット価格で購入できるので得した気分になります。
トロワの宿泊施設
Hôtel la Maison de Rhodes
数々の要人やスターも宿泊する、トロワの歴史ある5つ星ホテル。
トロワらしい木骨組みの外観に趣があります。
La Maison de Rhodes Hôtel & Spa(ラ・メゾン・ド・ロード・ホテル&スパ)
住所:18 Rue Linard Gonthier, 10000 Troyes
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Best Western Premier de la Poste

Best Western Premier de la Poste(ベスト・ウェスタン・プルミエ・ド・ラ・ポスト)
住所:35 Rue Emile Zola, 10000 Troyes
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Kyriad Troyes Centre


実際に宿泊しました。日本のビジネスホテルのような部屋です。設備は清潔で、寝る部屋として十分に感じました。
Kyriad Troyes Centre(キリアド・トロワ・サントル)
住所:44 Av. Chomedey de Maisonneuve, 10000 Troyes
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トロワ周辺の村
Mongueux(モングー)

モングー(Mongueux)村は、トロワの西約12kmに位置する丘陵地(車で約15分)。
南東向きの斜面と石灰質土壌が特徴で、オーブ地区で有名なシャルドネのエリアです。

丘の上にあるモングー村。「シャンパーニュ地方のモンラッシェ」という異名を持つシャルドネの銘醸地です。

Chaurouce(シャウルス)
中世の雰囲気漂うシャウルス(Chaurouce)村は、トロワから南へ約30km(車で約30分)の場所にあります。
村名と同じ名前の「シャウルス」チーズが有名。
村の教会には、精巧な彫刻が施された墓所があり、芸術的価値が高いとされています。
地元のチーズ工房や市場で、新鮮なチーズを購入することができます。
Lac d’Orient(オリエント湖)
トロワから東へ約20km(車で約20〜25分)に位置する広大な湖、オリエント湖(Lac d’Orient)。
夏季には水泳、カヌー、セーリングなどのウォータースポーツが楽しめるほか、湖周辺にはサイクリングロードが整備されており、自然の中を自転車で巡ることができます。
湖畔の村々では、地元のレストランやカフェでリラックスしたひとときを過ごせます。


夏場は、オリエント湖の「ビーチ」が賑わいます。トロワのあるオーブ県、ランスやエペルネのあるマルヌ県など「海なし県民」のビーチです。
遊園地「ニグロランド」
ニグロランド(Nigloland)はトロワから車で約45分、オーブ県のドゥルセー(Dolancourt)にあるファミリー向けテーマパーク。
絶叫系から小さな子供向けまで、40以上のアトラクションが揃います。
特に人気なのは、フランス最大級の木製ジェットコースター「Alpina Blitz」や、回転型フリーフォール「Donjon de l’Extrême」。
3歳以下でも乗れるアトラクションが豊富で、怖くない乗り物や可愛らしいテーマのエリアが多いです。
自然豊かな環境で、ピクニックエリアやレストランも充実。
フランス国内でも「家族連れに優しい遊園地」として高い人気がそうです。

子連れシャンパーニュ旅行は、大人は存分に楽しむ反面、子供は退屈しがち。ランスやエペルネに来るお客さんの中には「ユーロ・ディズニー」を旅程に組み込む方も少なくありません。ニグロランドとトロワは比較的近くて便利。遊園地をメインにして、ついでにトロワに行く(もしくは逆)も良いと思います。
園内にあるホテル「Hôtel des Pirates」も高評価で、宿泊してゆっくり楽しむのも良いかもしれません。
Hotel des Pirates(ホテル・デ・ピラット)(Nigloland Hôtels)
住所:Rue De La Vallée Du Landion 10200 DOLANCOURT
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パリから日帰りできる、中世の雰囲気が漂う街「トロワ」
- トロワ市街は「シャンパーニュのコルク」の形
- パリから電車で1時間30分、日帰り可能
- 中世の雰囲気を残す、木骨組みの家の街並み
- アンドゥイエット&シャウルスは、ぜひ味わいたいトロワ名物
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