シャンパーニュの旅行は車があると、快適さと楽しみは何倍も広がります。ブドウ畑が最たる例で、車なしではなかなか行くことができない場所にある場合はほとんどです。とはいえ、レンタカーの利用には「海外での運転に不安に感じる方」や「ワインを飲みたいから運転はしたくない(できない)」という方もいるかと思います。
そんな方に便利なハイヤー車「VTC」の予約方法をご紹介します。シャルル・ド・ゴール空港からシャンパーニュ地方までの迎車のみならず、シャンパーニュ地方からブルゴーニュ地方への移動にも便利です。
VTCとは「ハイヤー車」
VTCとは、Véhicule de Tourisme avec Chauffeur の略で、直訳すると「運転手付き乗用車」を意味します。日本でいうところの「ハイヤー」です。このVTCを前もって予約しておけば、指定の場所と時間に、運転手が迎えにきてくれます。シャルル・ド・ゴール空港に到着して、荷物を受け取った後の出口の前で待っていてもらうことも可能です。
TAXI(タクシー)とVTCの違いは?
基本的には、日本でのタクシーとハイヤーの違いと同じです。
タクシー | VTC | |
---|---|---|
料金 | 距離と時間に応じる (到着しないとわからない) | 定額 (予約時にわかる) |
乗車方法 | 駅や空港などのタクシー乗り場、迎車 | 完全予約制 |
車の外観 | 車の屋根にTAXIのサインがある | 特にサインはなし、一般乗用車と同じ |
最大乗車人数 | 7人 (※運転手を除く。車両による) | 8人 (※運転手を除く。車両による) |
サービス | 特になし | ミネラルウォーター、新聞など |
VTCの良いところは、予め料金がわかることです。それ以上の金額を請求されることはありません。
VTCの見積・予約方法
VTCの一般的な利用手順は次のとおりです。
インターネット検索が簡単。
「VTC Reims」「VTC Epernay」と検索すれば、いろいろな事業者がすぐに見つかります。
空港の送迎であれば、タクシー会社もVTCと同様のサービスを行なっていることもあります。
滞在先のホテルのフロントに依頼しても良いでしょう。
シャンパーニュ地方の地元VTC業者に依頼するのがおすすめ
以前、某シャンパーニュ生産者のドメーヌ(酒蔵)で待ち合わせをした際に、パリのVTCに乗ったお客さんが大遅刻をしたことがありました。その運転手さんに話を聞いたら「ナビを見ながら運転して来たけれど、シャンパーニュに来たことがないので村に到着してから迷ってしまった」と話していました。
シャルル・ド・ゴール空港に迎車を依頼する場合であっても、シャンパーニュに向かう予定ならば、ランスやエペルネなど、シャンパーニュが地元のVTC業者に依頼するのがおすすめです。地元の運転手さんは、生産者の窓口やホテルのフロントとも直接顔見知りのことも多いので、いざという時に地元ならではの機転を利かせてくれることも珍しくありません。
また、ランスやエペルネ界隈のVTC運転手は、空港やパリ市内に行く機会が多いので、パリの運転にも比較的慣れています。
事業者を見つけたら、ホームページの問合せフォームや、メールで見積を依頼します(仏語か英語)。
タクシーほど料金が規制されていないため、事業者により料金に多少の差があります。
シャルル・ド・ゴール空港からランス(またはエペルネ)まで一般的な4人用乗用車1台を依頼した場合、筆者の経験では、150€~が相場の印象です。
まだ予約するかはわからない段階なので、「価格を知りたい」旨を伝れば大丈夫です。
見積の際は、次のことを記載すると良いでしょう。
- 利用予定日
- 迎えに来てほしい時間(※わからない場合は、「到着したい時間」を伝えても良いと思います)
- 出発地と到着地(例)シャルル・ド・ゴール国際空港から、ランス市街まで
- 乗車予定人数
- スーツケースの数
複数名で乗車を考えている場合は、スーツケースの数を伝えることをおすすめします。
VTC業者が適切なサイズの車を把握するための判断材料になります。
見積金額に納得ができたら、見積メールに返信する形で「予約をしたい」旨を送信しましょう。
予約時には、下記内容を記載すると良いでしょう。
- 予約者(あなた)の名前
- 合計乗車人数
- 迎えに来てほしい日時・場所(住所)
- 目的地の名称と住所
- (空港の場合は)到着便または出発便の番号
- フランスで連絡可能な通信手段(電話・メールなど。現地で運転手と必ず連絡可能な手段)
出発地・目的地が空港の場合は「空港名とターミナル」を伝えてください。特に、空港に迎えに来てもらう際は「荷物を受け取って出口に着く」時間を想定して依頼しましょう。
飛行機の遅れや、道路の渋滞などで、稀に待ち合わせが時間通りにいかないこともあります。そうした時のためにも、「到着便」を予め伝えておくことをおすすめします。気が利く運転手さんならば、フライトの到着時間をチェックしてくれるので、対応がスムーズです。
「フランスで連絡可能な通信手段」は必ず必要です。最終的に乗車できなかった場合でも、運転手側に不備がなければ料金は請求されるので注意してください。
予約依頼後、予約確認の返信が届いたら予約完了です。
依頼内容と料金に間違いはないか必ず確認してください。
疑問や変更がある場合は、曖昧なままにせず、業者に確認を取りましょう。
多くの場合、支払いは降車の際に「現金またはカード」で行います。
支払方法が明記されていない場合は、予め確認しておくと安心です。
紙幣:
・フランスでは、一般的に大きな額の紙幣を嫌います。
・VTCでは、50€の紙幣は受け取ってくれると思いますが、100€以上の紙幣は運転手によるかもしれません。
クレジット・カード:
・VISAとMASTERはどこでも問題なく使えます。
・上記以外のカード(AMEX、ダイナース、JCB等)を受付けないカード端末が多いです。
・携帯電話などのタッチ決済がうまく動作しないこともあるので、必ずカードも持参しましょう。
念を入れて、VTC利用数日前に、予約を再確認するとさらに安心です。
乗車当日:(例)シャルル・ド・ゴール国際空港に迎えに来てもらう場合
乗車当日の流れは、概ね次のとおりです。
- 搭乗便がシャルル・ド・ゴール国際空港に到着。
- 入国審査を経て、荷物を受け取る。
- 出口に出ると、運転手が予約者の名前が書かれた紙やタブレットを掲げて待っている。
- 運転手と一緒に、車の元へ向かう。
- 車に荷物を積み、乗り込んで、出発する。
- 到着地に着いたら、予約時に知らされた金額を車内で支払ってから降車する。
VTC活用例
シャルル・ド・ゴール国際空港→シャンパーニュ地方(ランス、エペルネ、近郊の街や村)
VTCを使えば、長時間フライトで疲れた後、乗換や荷物の心配もなく、スムーズな移動が可能です。複数人で予約すると、TGVで移動するのと料金的にはあまり差がないほどの時もあります。限られた休暇を最大限に使えるという意味でも魅力的です。
ランスやエペルネといった市街地だけでなく、車ならば街から離れた村に行くのも問題ありません。ブドウ畑に至近のホテルや、生産者直営の宿泊施設に泊まるという選択肢も広がります。
シャンパーニュ地方の周遊
例えば、ある日の午前から夕方まで、モンターニュ・ド・ランスの生産者を巡りたい場合、VTCを1日貸し切ることも可能です。「ランスとエペルネの間の範囲内で、朝9時から18時まで貸し切る場合の料金は?」といった具合に見積を依頼しても良いでしょう。
ランス or エペルネ→オーブ地方 or ブルゴーニュ地方
ランスやエペルネから、オーブ地方またはブルゴーニュ地方に行くには、車移動がいちばん便利です。電車移動の場合、パリを経由する必要があり、1日の大半を移動に費やしてしまうことになります。その点、VTC移動ならば、ランスを朝9時に出発すれば、ボーヌのレストランで昼食を楽しむことができます。
オーブ地方のトロワ(Troyes)、ブルゴーニュ地方ボーヌ(Beaune)まで車移動した場合の所要時間
- ランスまたはエペルネ→トロワ 約1時間半
- ランスまたはエペルネ→ボーヌ 約3時間
語学的なハードルについて
フランス語を話せない、英語が苦手…といった、語学的なハードルを感じる人もいるかもしれません。運転手さんは、英語を話せないことも多いですが、空港送迎サービスをしている人は、外国人観光客に慣れています。業務範囲内のことならば片言の英語で対応してくれるはずです。困った時には、翻訳アプリに頼っても大丈夫です(ちなみに、筆者はそういう欧米人観光客に山ほど会っています)。
顔見知りの運転手さんから、日本人のお客さんのことで「困った!」という後日談をいくつか聞いたことがあります。しかし、それが語学的な問題だったことはありません。そのほとんどは「待ち合わせの場所に行ったけれどもお客さんが来ていない。連絡したけれどお客さんから返事がない」というものです。
予約時に入力した携帯番号が日本だけで使える状態では意味がありません。必ず運転手さんと連絡が取れる通信手段を用意してください。
まとめ:VTCを活用して、快適で楽しい旅を
シャンパーニュ地方に来ることが目的なのにわざわざパリを経由する方や、車がないことを理由に行きたい場所に行けないと残念がる方に会ったことが何度かあります。(VTCを使ったら便利だったのに…)と思った場面です。VTCを上手に活用して、シャンパーニュ地方の旅を最大限楽しんでください。

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