「ドンペリニヨン」ゆかりの村、オーヴィレ観光のポイント

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Hauvillers

高級シャンパーニュの代名詞「ドン・ペリニヨン」、通称「ドンペリ」のルーツが、エペルネからほど近いオーヴィレ村です。

世界遺産「シャンパーニュの丘陵、メゾン、カーヴ」の「丘陵」には、オーヴィレ村の畑も含まれており、丘の上から見下ろすブドウ畑の景観は必見。

また、村の建物に目を向ければ、たくさんの「かわいい看板」に出会うことができます。

フランスの田舎らしい素朴な可愛らしさがある、オーヴィレ村の観光のポイントを詳しく紹介します。

目次

シャンパーニュのゆりかご

オーヴィレを描いたポスター
オーヴィレールの村を描いたポスター

オーヴィレ(Hautvillers)の村は、「Le berceau du Champagne(シャンパーニュのゆりかご)」と呼ばれます。

オーヴィレは小さな村ですが、高級シャンパーニュの代名詞「ドン・ペリニヨン」(通称「ドン・ペリ」)の名前の由来となった修道士、ドン・ピエール・ペリニヨンがいたことから、シャンパーニュの礎が築かれた場所として有名です。

また、世界遺産「シャンパーニュの丘陵、メゾン、カーヴ」(2015年登録)の主要な構成要素として、オーヴィレのブドウ畑カーヴが登録されています。

Hautvillers の発音に注意

細かい話ですが、Hautvillers を日本語で書く時、広く使われているのは「オーヴィレール」ですが、「オーヴィレ」の方がフランス語の発音に近いです。

Hautvillersの発音・表記
  • オーヴィレール…一般的な表記。ドン・ペリニヨンの正規代理店サイトでは、この表記です。
  • オーヴィレ  …本来のフランス語の発音に近い
  • オーヴィエ  …グーグル・マップは、この表記です。

この記事では、「オーヴィレ」表記を採用します。

筆者

日本語での表記は知ってさえいれば特に問題ありませんが、タクシーの運転手さんなど、フランス人相手に口頭で伝える場合には「オーヴィレ」と言った方が理解されやすいでしょう。

ドン・ペリニヨン

オーヴィレ村といえばドン・ペリニヨンが有名ですが、「そもそもドン・ペリニヨンって?」から説明します。

シャンパーニュ「ドン・ペリニヨン」

ドン・ペリニヨン(通称「ドンペリ」)とは、モエ・エ・シャンドン社の最高級シャンパーニュで、高級シャンパーニュの代名詞です。

ドン・ペリニヨンのロゼ・シャンパーニュは、そのワインがピンクであることから「ピン・ドン」と呼ばれることもあります。

ドン・ペリニヨン修道士

ドン・ペリニヨン像(Statue de Dom Perignon)
エペルネのモエ・エ・シャンドン本社にあるドン・ペリニヨン銅像

高級シャンパーニュ「ドン・ペリニヨン」の商品名は、実在した人物ドン・ピエール・ペリニョン修道士(Dom Pierre Pérignon,1668 – 1715)が由来です。

ドン・ピエール・ペリニヨンは、オーヴィレ修道院のベネディクト教会の修道士で、修道院のセラーマスターを務めた人物です。

初めてアッサンブラージュをした人

シャンパーニュの父」と呼ばれることもあるドン・ペリニヨン修道士。

シャンパーニュ造りにおいて、現在でも重要な製造工程のひとつ「アッサンブラージュ」を初めて行った人物です。

Assemblage(アッサンブラージュ)

「ブレンド」作業を意味する言葉で、日本語は「調合」。

収穫したブドウを速やかに圧搾、搾られた果汁が発酵して白ワインとなります。

村ごと、ブドウ品種ごとに、圧搾して、シャンパーニュの原酒となる白ワインを仕込み、醸造責任者を中心に何度も試飲を重ねながらブレンド比率を決定した後に、瓶詰めを行います。

シャンパーニュの泡ができるのは、瓶詰め後の工程です。

ドン・ペリニヨン修道士の功績は、ブドウ品種やワインの違いを見定めて、理論的にアッサンブラージュ(ブレンド)を始めたことです。

アッサンブラージュ技術が導入される以前は、ワインのブレンドはなんとなく行われていた偶然の産物で、ブレンドの技術は確立されていませんでした。

ドン・ペリニヨン修道士は、ブドウの産地(村)やブドウ品種の違いや特徴を考慮して、質の高いワインを造るために、アッサンブラージュ(ブレンド)を始めました。

筆者

シャンパーニュを初めて作った人物のように誤解されていることが多いのですが、ドン・ペリニヨン修道士は「アッサンブラージュを初めて実践した人物」です。

ドン・ペリニヨンが眠る教会

オーヴィレ修道院、聖サンデュルフ教会(Église abbatiale Saint-Sindulphe d’Hautvillers)

オーヴィレ村の見逃せない観光スポットは、「オーヴィレ修道院」です。

ただし、一般観光客が実際に訪問することができるのは、ごく一部のみ。

オーヴィレ修道院の教会、聖サンデュルフ教会(Église abbatiale Saint-Sindulphe d’Hautvillers)は見学可能です。

オーヴィレ修道院の教会に、ドン・ペリニヨン修道士のお墓があります。

オーヴィレ修道院の教会内にあるドン・ペリニヨン修道士のお墓(左)
オーヴィレ修道院の教会の祭壇前にあるドン・ペリニヨン修道士のお墓(左)

ドン・ルイナールも眠る教会

オーヴィレ修道院の教会内部
祭壇へと続く中央の通路上、黒い石の部分がドン・ルイナールの墓

オーヴィレ修道院の教会には、ドン・ペリニヨン修道士のみならず、ドン・ルイナール修道士も眠っています。

ランスに本社があるシャンパーニュ・ルイナール(Champagne Ruinart)社の最高級シャンパーニュ「ドン・ルイナール(Dom Ruinart)」の名前の由来が、ドン・ルイナール修道士。

立て札など何もありませんが、ドン・ルイナールの墓は、教会内の中央の通路上、床が黒い場所。

黒いタイルのそばに刻まれている文字を注意深く見ると、ドン・ルイナールらしき文字が読み取れます。

オーヴィレ修道院の教会内にあるドン・ルイナール修道士のお墓
石碑の2行目・最後「RVYNART」が「ルイナール(Ruinart)」と読み取れる

修道院の修復計画が進行中

ドン・ペリニヨン(Dom Pérignon)の私有地であることを示す表札
モエ・エ・シャンドン社「ドン・ペリニヨン」の私有地であることを示す表札

オーヴィレ修道院の大部分は、モエ・エ・シャンドン社「ドン・ペリニヨン」の私有地のため一般客は訪問することができません。

しかし現在オーヴィレ修道院の大規模な修復プロジェクトが進行中で、2028年に一般公開を見込んでいます。

X投稿でシェアした記事によれば、修復後のオーヴィレ修道院には、ティスティングルーム、昼食・夕食を楽しむことができる「Table Dom Perignon(ドン・ペリニヨンの食卓)」が設備される予定。

この大規模な修復計画には、有名建築家・造園家が招集されています。

オーヴィレ修道院の修復に関わる専門家
  • 建築家John Pawson氏:英国人。ミニマリストな建築スタイルで知られる
  • 造園家Peter Wirtz氏:ベルギー人。代表作はles jardins du Carrousel du Louvre(カルーゼル庭園)、le jardin du palais de l’Élysée(大統領府エリゼ宮の庭園)

2025年後半から工事開始、2027年に工事完了、2028年に一般公開予定。

密に人気の写真スポット

オーヴィレ修道院

オーヴィレ修道院には、密かな写真スポットがあります。

教会の入口に向かって左の道を直進、Dom Périgon の黒い札がかかる門の手前まで歩いたら、左を見ると、石段があります。

この石段が記念撮影の人気スポット。

石段を降りきると、Rue de Cumière(キュミエール)通りです。

石段の先に見える鐘楼が美しく、良い雰囲気の写真が撮れます。

筆者

教会見学が終わったらすぐに出発してしまう人が多いのですが、時間が許すようなら、立ち寄ってみてください。

オーヴィレ修道院

聖サンデュルフ教会(Église abbatiale Saint-Sindulphe d’Hautvillers)

  • 住所:21 Rue de l’Abbaye, 51160 Hautvillers
  • 入場無料
  • 開館時間(※2023年5月時点):
    • 月・火・木・金 8時15分〜18時00分
    • 水 8時15分〜16時15分
    • 土・日 9時00分〜18時00分

もう1つのドン・ペリニヨン像

オーヴィレのドン・ペリニョンの銅像
オーヴィレ村にあるドン・ペリニヨン像

「ドン・ペリニヨン像」といえば、エペルネのモエ・エ・シャンドン本社にある観光客に大人気の写真スポット。

あまり知られていませんが、「もうひとつのドン・ペリニヨン像」がオーヴィレ村にあります。

この銅像の落成式が行われたのは、2022年6月11日。

とても新しい銅像です。

エペルネ版は手にボトルを持っていますが、オーヴィレ版は左手にグラス、右手にブドウを持っています。

オーヴィレ修道院の教会と1本違いの通りにあり、とても近いので、興味がある方はぜひ立ち寄ってみてください。

ドン・ペリニヨン像(Statue Dom Pérignon)

住所:168 Rue des Buttes, 51160 Hautvillers

眺望抜群のピクニック・エリア

オーヴィレの丘の上から見たブドウ畑の景色
オーヴィレの丘の上から見たブドウ畑の眺め。奥にはマルヌ川と隣村キュミエールの集落が見える

オーヴィレ修道院を後にして、裏手に回るように歩みを進めると、まもなくブドウ畑の景色が広がります。

オーヴィレの丘の上から眺めるブドウ畑は素晴らしく、清々しい気持ちになれる場所。

オーヴィレでピクニックを楽しむ人たち
天気の良い日、特に週末は、ピクニックを楽しむ人たちで賑わう

観光ガイドの誰もがおすすめする絶景ポイントですが、同時にピクニック・エリアでもあります。

筆者

ランチだけでなく、日が長い季節の夕方に「アペリティフ」や「ディナー」のピクニックを楽しむ人もいます。ここで飲むシャンパーニュは格別ですよ。

ピクニック・エリア「レ・チュイロ」(Aire de pique-nique “Les Tuileau”)

住所:212 Rue de Cumières, 51160 Hautvillers

職業がわかる「かわいい看板」

オーヴィレを散策する楽しみのひとつが、「かわいい看板」。

オーヴィレ村は 1950 年代に、中世の時代に文字が読めない人でも、その建物の商いの内容がわかるようにと使われていたという鋳鉄製の看板の伝統を復活させました。

村の中に、このような看板は140個あります。

筆者

フランスのかわいい田舎の村という趣で、少し上を向いて歩くのが楽しくなります。

新店続々、レストラン&カフェ

2024年、オーヴィレ村にビストロやワインバーが3軒オープン(2024年11月末時点)。

観光客に人気の高い村でありながら、飲食店の選択肢がないという問題点が解消されつつあります。

Café d’Hautvillers

カフェ・ドーヴィレ(Café d’Hautvillers)

カフェですが、料理メニューもあります。

観光シーズンのテラス席は、いつも賑わっています。

筆者

夏場に観光客で賑わうテラス席の印象が強かったのですが、雨が降る日に初めて店内に入りました。清潔感のあるかわいらしい雰囲気の中で、フランスの気取らない料理を楽しめました。

Café d’Hautvillers(カフェ・ドーヴィレ)

住所:2 place de la République 51160 Hautvillers

Au 36

オ・トラントシス(Au 36), オーヴィレ(Hautvillers)

生産者価格でボトル販売を行うワインショップ。

テーブル席があり、シャンパーニュの試飲を楽しめます。

フードメニューは「おつまみ・軽食」の趣です。

ブドウ品種飲み比べセットもあり。

Au 36(オ・トラントシス)

住所:36 et 37 rue Dom Pérignon 51160 Hautvillers

ネット予約可能

Le beau lieu

ビストロ&ワインバーとして2024年にオープンした「Le beau lieu(ル・ボー・リュ)」。

オーヴィレール修道院のある通りの角にある小さなレストランは「ワインショップ」でもあります。

シャンパーニュだけでなくワインも幅広い品揃え。

料理の選択肢は決して多いとはいえませんが、シャンパーニュ・ワインと一緒に軽くつまむにも、しっかりとした食事にも対応できる内容です。

筆者

グラスワインのセレクトはシャンパーニュ・赤・白とも1種類ずつですが、セレクトが利いた内容。私が行った時は、アンリジローのラタフィアもグラスで注文できました。

Le beau lieu(ル・ボー・リュ)

住所:48 Rue de Cumières 51160 Hautvillers

Le Clotaire

2024年10月にオープンしたレストラン「Le Clotaire(ル・クロテール)」。

オーナーのHulin(ユラン)夫妻、妻エレーヌさんはオーヴィレ村にドメーヌがあるChampagne Marion-Bosser(マリオン・ボセール)のヴィニュロンヌ、夫シャルルさんはブジー村のブドウ栽培者。

料理は、ビストロノミー(ビストロ(食堂)+ガストロノミー(美食)からできた言葉。「カジュアルな雰囲気でありながらも上質な料理」を指す)志向。

シャンパーニュは同じオーヴィレ村の生産者が中心で、スティルワインはフランスの主要産地のワインが数種類ずつ用意されています。

筆者

地元の評判は上々のようです。ドン・ペリニョンのお墓がある教会と1本違いの通りにあります。

Le Clotaire(ル・クロテール)

住所:29 rue de la Croix de Fer 51160 Hautvillers

Le Chai des Moines

「修道士たちの酒蔵」を意味する名前を持つ、Le Chai des Moines(ル・シェ・デ・モワヌ)は、2024年にオープン。

ワインバーとしても、食事を楽しむビストロとしても機能する店です(ディナー営業は木〜土のみ)。

筆者

「夜に食事をする店がない」と言われていたオーヴィレ村とっては、待望の店です。

Le Chai des Moines(ル・シェ・デ・モワヌ)

住所:34 rue Henri Martin 51160 Hautvillers

オーヴィレの行き方

オーヴィレールの観光案内所(Office de Touriseme d'Hautvillers)
オーヴィレール観光案内所(Office de Tourisme d’Hautvillers)

オーヴィレへのアクセスは、基本的に「車」移動です。

オーヴィレに向かう公共交通手段(電車、バス)はありません(※2023年5月時点)

主な出発地から、オーヴィレまでの車での所要時間は次のとおりです。

車でオーヴィレに行く場合の所要時間
  • エペルネから10分
  • アイから13分
  • シャンパーニュ・アルデンヌTGV駅から25分
  • ランスから30分

タクシーまたはハイヤーの手配を

レンタカーを運転する人を除けば、タクシーまたはハイヤーを手配してオーヴィレ村へ行くのが一般的な方法です。

車移動の途中で寄るのもおすすめ

オーヴィレ観光にあまり時間を割けない方は、車移動のついでにオーヴィレ村に少し立ち寄るのもおすすめです。

オーヴィレ村の滞在時間が20分あれば、次の2つは可能。

  • オーヴィレ修道院の教会内の見学
  • 展望ポイントでブドウ畑の風景を写真撮影

ガイド付のプライベート・ツアーは、必ずと言って良いほどオーヴィレ村に寄りますが、滞在時間は30分もないパターンがほとんどです。

筆者

短い滞在であっても、訪れた人はみんなが喜ぶ場所。エペルネ付近を車移動する予定がある方には、特におすすめします。

レンタル自転車

体力と時間に余裕のある方は「レンタル自転車」で移動する方法もあります。

エペルネの観光案内所で半日単位でレンタルが可能です。

電動自転車という選択肢もあるので、興味のある方は挑戦してみてください。

詳細は、エペルネ観光事務所のサイト(フランス語・英語)で確認できます。

筆者

自転車のレンタルを希望する場合は、事前予約することをおすすめします。「当日に行ったら借りられなかった」と聞いたことが何度もあります。

まとめ

  • オーヴィレ修道院の教会には、ドン・ペリニヨンとドン・ルイナールの墓がある
  • ドン・ペリニヨン修道士はアッサンブラージュ(ブレンド)を初めて実践した人
  • 新しいドン・ペリニヨン銅像がある
  • 修道院の教会の裏手にある眺望ポイントは、人気のピクニック・エリア
  • 村の中に140ある「かわいい看板」にも注目
  • オーヴィレへのアクセスは基本的に「車」移動

シャンパーニュ「ドン・ペリニヨン」を製造・販売するモエ・エ・シャンドン本社があるエペルネは、オーヴィレを訪れる際には起点になる街です。

エペルネ観光の詳細は下の記事を参考にしてください。

エペルネ近郊の観光では、グランクリュのひとつである「アイ」もおすすめです。

オーヴィレからアイまで車で10分。

1日で2つの村を楽しむこともできます。

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